金投資を検討すべきか

金は一般的には安全資産として見られており、有事の際には資金を移動するべき対象とよく言われております。
個人的には、まだその論理に納得がしきっておらず、仮に”有事”とされる状況になっても資金を移すかどうかは正直決めきれておりません。

納得がいっていない理由は大雑把に言ってしまうと、適正な価格というものが計算できないからです。
企業価値なら、以前記載したとおり、理論上の価格を計算することは出来なくはないので、その価格を基準に割安だと判断できれば投資するということができます。
しかし、金の場合はいくらが適正価格か、計算が難しいです。基本的には需給で決まるものであり、金そのものは企業と異なり現金を生み出すことをしませんので、キャッシュフローの観点からの試算ができないからです。

安全資産と言われている金であっても、果たしてそれがその時点でどう割安なのか、割高なのかは、今後どの程度資金が金に向かってくるかを予想しないといけないわけです。
確かに破綻しようがないので、株や債券と異なり価値が0になることは基本的にはありません。しかし、用途の半分以上が宝飾用であるという金をどう評価すればいいのかは、基本的には世界の資金の流れを予想することが重要となってくるため、個人的にはかなり保有することは厳しいと感じております。当然ながら、金から資金が別のものに向かえば金の価格は非常に下がります。資源エネルギーとは異なり、過剰供給という点をそこまで考えなくてもいい一方で、金の使途はかなり限られているので、

金への投資を勧めている有名投資家もここ数年かなり多いと感じます。今後の見通しが悲観的であったり、いい投資先が見つからなかったりするということが多く、一先ず幾分かは金へ投資しているという感じです。
多くの投資家はヘッジファンドマネージャーですので、短期的にもリターンを下げることを嫌がります。ですので、一般的に株価と正の相関が低いとされている金へ投資することで、ポートフォリオ・マネジメント上、ヘッジをしている意味合いが強いと思います。毎月mark to marketする必要のない投資家はこのようなことを果たして本当にする必要があるのかは正直まだ個人的には分かっておりません。

スモールIPOは悪いことなのか?

少し前ですが、IPO後の株価が冴えない企業が散見されたこともあり、スモールIPO(時価総額が小さいままで上場すること)が多くの識者?に批判されていましたね。堀江貴文氏なども企業は大きくなってから上場したほうがいいという意見のようですが(例えばユニコーンになってからとか)、これは一体どういう考えなのでしょうか。

要は創業者やベンチャーキャピタルなどが”上場ゴール”という概念のもと、手っ取り早くリターンを確定し、その後の業績低迷などの影響は市場に押しつけることが問題であるということです。
後は未上場のうちに巨額な増資を行い、業界でのポジションを確固たるものにしてから上場したほうがいいというものでしょうか。恐らく未上場市場の方が一般的に長期的な視点で資金が投入されるため、未上場の時点でできるだけ資金調達しておいた方がいいという考え方だと思います。

確かに市場に対して期待ばかり持たせて上場時の株価を上げて、蓋をあけてみたら全然期待に沿えない業績で株価は低迷するということは問題ではあると思います。
しかし、上場株投資家の目線からすれば、IPOしてくれる企業というのはできるだけ多いほうがよいのではないかと考えております。確かに期待だけ煽って、実態はゴミのような企業というのはありますが、それでも上場時のオファリングの際には機関投資家を中心に値付けがされるわけであり、プロの目がしっかり入ったものであります。個人投資家にIPO株というレア物感を醸してはめ込むというのはどう考えても詐欺的ではありますが、プロの目を通じた値付けがされている以上、証券会社やベンチャーキャピタルだけが儲かる取引だと攻めるのもナンセンスであると思います。(加えて、創業者/VCなど既存の大株主にはロックアップが設定されておりますし)

未上場のうちに巨額な資金調達をしておいた方がいいという意見に対しては、結局企業からすればそれができればしていると思うんですよね。上場してしまうと成長のための長期的な目線にたった増資が難しいという見方もありますが、質のいい企業であると市場に見られる限り、当然ながら増資は可能であり、長期的な目線にたった資金だって当然入ってくるわけです(VCから未上場時に長期的な資金を調達できるという意見も、結局ファンドの期限がある限り所詮5-7年程度だと考えるべきですし)

以上の通り、時価総額が仮に小さい状態でもIPOしてもらえることで、上場株投資家の選択肢は広がりますし、思わぬ掘り出しものを保有する機会も得られますので、個人的にはどんどんとスモールIPOはしていってもらいたいと考えております。

企業側の目線にたつと、上場することのコスト(上場費用の金額だけではなく、諸々の開示や投資家説明、法的リスクの増加など)を考えると中々厳しい環境に身をおくことになりますので、非常に大変だろうなとは素直に思いますが。(当然割安だと思わない限りは個人的には全く手をだせません。そして、IPOは基本的には非常に市場から注目されるイベントですので、明らかに割安な価格になることは余りないです)

Mr.マーケット vs 効率的市場仮説

バリュー投資の始祖であり、賢明なる投資家の著者であるベンジャミングラハムが市場をMr.マーケット(マーケットさん)の話としてその特徴を記載したという話は有名かと存じます。
あなたはマーケットさんと一緒にビジネスを行っており、頻繁にそのビジネスの自分の持ち分をいくらであなたに売りたいと言ってきたり、逆にいくらであなたの持ち分を購入したいと言ってきます。あなたは彼のオファーを断っても問題はないです。基本的には毎日、時には全く違う値段でオファーしてくるからです。マーケットさんはかなり悲観的になったり楽観的になったりするなど躁鬱病でもあります。

マーケットさんには以下の特徴があります。

・感情的で陶酔的であり、気難しい
・しばしば非合理
・取引を実行するかは完全にあなたの判断に任せる
・あなたに安く買い、高く売るチャンスを提供してくれる
・大体は合理的であるが、、いつもではない

上記がベンジャミングラハムの目から見た株式市場であり、市場は時に余りに悲観的になったり、非合理な瞬間がくるので、それをうまく利用すれば魅力的な価格で投資ができるということを表しております。

この考え方がまさにバリュー投資という概念の根源であり、株価がどう動こうが「あっせんなよ」、ということなのです。市場は急に楽観的にもなりますし悲観的にもなりますが、しっかりと本質を見極め、異常に割安に投資できるものが出てくるものを待ち続け、投資後は割安度がいつか解消されると気長に見ていく必要があるということです。

一方で、効率性市場仮説というものも有名です。こちらはノーベル経済学賞受賞したシカゴ大学のユージン・ファーマ教授が論文を書いており、市場は全ての情報に対して効率的であり、株は常に公正な価格で取引されているため、投資家は株を割安に買うことも、割高に売ることもなにもできないということです。市場の平均以上のパフォーマンスを残すことはできないので、ごちゃごちゃ個別銘柄の分析などせずにインデックス買っとけという話です。

完全にグラハムの考えるMr.マーケットの考え方とは正反対であることが分かるかと思います。効率的市場仮説を補強することでよく使われるのが、プロの投資家でも殆どは市場に勝てていないというものです。以下のリンクの通り殆どのヘッジファンドは早期に閉鎖に追い込まれてしまっていることがこの仮説の証左であるとみる方も多いと思われます。
http://www.marketwatch.com/story/hedge-funds-closed-down-last-year-at-a-pace-unseen-since-2008-2017-03-17
これはヘッジファンド/機関投資家ならではの制約によるものが大きいという点もありますので、また別途書きたいと思います。

正直に言って個人的にはMr.マーケット派ではありますが、効率的市場仮説自体にも一般論としていい面がありますので、これも別途書いていきたいと思います。

ちょっとした財務戦略によって株主価値の歪みは解消できる?

バリュー投資をしていると、なんでこんな株主を無視したような資本構成が存在するのであろうと疑問を持つような企業があることに気づきます。(そういったところへ投資するのが基本です)
端的に言ってしまうと、やたらと現金を寝かせている、やたらと有価証券に投資している、投資有価証券などの金融資産への投資を進めている、不動産などの非事業資産へ投資をしている企業といったところです。

これらの非事業資産(余剰現金同等物、投資有価証券、不動産等)を保有している企業は資金を株主還元に向けるべきであり、特に投資有価証券などに投資していたり、資金を寝かせている場合ではないのです。
株主はその企業の事業に投資をしているのであって、投資ファンドになってもらう必要はないのであり、すぐに何か成長投資となる対象がなければ還元してほしいということです。

まず、株主還元は配当と自社株買いがありますが、基本的な概念としては、事業の営んでいく中で余剰金が生じた場合は株主に還元していくというものです。割安企業の多くはこの株主還元がしっかりと行われておらず、現金として保有したままであったり、はたまた自ら株式投資などをおこなってしまっていたりします。
成長企業の場合は、そもそもそこまで多くのキャッシュフローが出てこないケースが多いですし、少しでもキャッシュが生じた場合には更に成長投資に充てるため株主還元政策を行うことが稀であることも多いですが、成熟企業は間違いなく株主還元を継続的に実施すべきです。

まず配当ですが、増配すると基本的には将来的にもその水準が続くものとみなされ、仮に配当金を将来減らしたいときなど(成長投資に充てたいときなど)は減配として扱われるので、特別配当として余剰分は還元したほうがいいと言われることもあります。正直これは減配の理由にもよりますし、余剰資金を成長投資に充てたいから減配するという事自体は問題ない説明ではあります。しかし、将来的に事業が悪化したときに減配するとよりネガティブに捉えられることが多いという市場における一般論です。
配当以外の方法としては、自社株買いがあります。これは理論的には経済インパクトは配当と同じ効果ですが(市場で取引されている株を少なくすることで、既存の株主の一株あたりの利益は上昇する)、経済インパクトだけでなく市場に対して、自社の株価は割安だと会社側は考えているというメッセージ効果も見込まれます。

こういったことをするだけで、大分割安度は改善されます。しっかりと株主還元をすべき時にすることで、今後も事業からしっかりとキャッシュフローを創出することができる限り、ちゃんと株主に還元を行う企業であると認識がされるでしょう。

一方で、余剰資金を投資有価証券などに充てている企業は全く株主のことを考えられていません。投資のプロでもない事業会社がなんとなく持ち合いでしたり、取引先の企業に投資するというのは全くもってナンセンスです。株主はその企業を投資ファンドと思って投資しているわけではないからです。(ソフトバンクや商社などは別ですが)
また、将来のM&Aに備えて取っておく、ということを言う企業もありますが、M&Aは設備投資のようにやろうと思ってすぐにできるものでもないので、余りこういった発言は意味をなしません。余剰資金は株主還元すべきであり、仮に大規模な投資が必要になった場合はその都度借入などを通じて調達すべきです。銀行のガバナンスも効いた買収戦略となることは株主にとってもポジティブです。

更にもっと株主還元を実施したいという企業はリキャップという方法があります。リキャップ(Recapitalization)とは資本の再構成のことであり、自己資本(Equity)を減らして、借入金(Debt)を増やすということですが、一例を挙げると、借入を行い、その資金を使って自社株を買い入れるという取引があります。借入してきたお金をそのまま株主に還元するという取引ですが、自己資本が多い企業はこの取引を通じて企業全体としての資本コストを抑えることができるという考え方です。少し感覚的にはややこしいかもしれませんが、借入金と資本金だと資本金の方がコストが高いとコーポレート・ファイナンスでは考えられているからです。キャッシュフローが安定的に見込まれる企業ではリキャップという戦略もかなり有効に働きます。

最後に、少し上記の財務戦略と比較するとしょうもない話ではありますが、自己株式の消却というものもあります。これは以前に書いた記事でもありますが、市場が勘違いしやすいものなので、消却してしまえばそういった誤解を解くことができるということです。

以上をまとめると、
・投資有価証券、非事業資産の売却
・余剰資金を株主還元(特別配当、増配、自社株買い)
・自社株買いの消却
です。

これらを確実に実行していくことが、特に割安に放置されている企業にとっては有効に働き、割安な状況の解消につながります。是非今まで財務戦略を疎かにしてきた上場企業はこれらの項目を全て実施していってほしいですね。

アクティビスト(物言う株主)の重要性

国内のアクティビスト(物言う株主)と言えば村上ファンドといったイメージがあるかと思います。村上ファンドは当時世論的には相当厳しい立場に追いやられてしまったと思います。更にインサイダー取引の疑惑で一気に日本におけるアクティビストの地位は悪くなったかと思います。まだ投資ファンドというものが根付いていなかった時期にスティール・パートナーズなども世間を騒がせた結果、かなりイメージは悪くなっているかと存じます。

しかし、改めてアクティビストの活動を見てみると、基本的にはかなり正しく、株主のためになることを提言していることが分かるかと存じます。以下はいくつかの例です。

パナホーム(オアシス): パナソニックによるパナホームの完全子会社化の取引が2016年末に発表されたが、パナホームの株主であるアクティビストのOasis ManagementがTOB価格が不当に安値だと主張しました。安値だと主張する理由として、パナホームが抱えるかなりの額の現金同等物、および関係会社預け金の存在です。親会社であるパナソニックに子会社の資金を預けている構図があり、パナホームが生んできた現金が成長投資やパナホームの株主還元に利用されず、親会社であるパナソニックにいいように財布として使われてしまっているというのが論点です。
パナホームは確かに長年割安銘柄として有名であり、その原因としてその豊富な現金が全く評価されていないという点が挙げられておりました。
結果的にパナソニックはTOBプレミアムを大幅に上げることになり、少数株主にもたらされるリターンはかなり上昇しました。

東芝プラント(オアシス): 経営危機に立たせられている東芝でしたが、子会社の東芝プラントシステムが850億円以上を預け金として東芝に貸し付けていたという状態を解消するようにアクティビストのOasis Managementが主張しました。不正会計で問題になっている、潰れそうな親会社に対して、自社の資金を銀行よりも有利な条件で貸し付けていることは正気の沙汰ではないですし、東芝プラントの少数株主(東芝以外の株主)からすると、そのような資金があるなら成長投資に回すか、株主還元してくれという話です。そもそもこのような預け金のせいで、株主からすると株主還元が期待できないということで長年割安になっているという背景もありました。
この主張も認められ、東芝プラントの預け金は解約を認められました。

フェイス/日本コロムビア(RMBキャピタル): フェイスおよび日本コロムビアの大株主であるRMBキャピタルは、フェイスによる日本コロムビアの完全子会社化に反対表明を出しました。ポイントとしては、フェイスが新株を発行しその株を株式交換という手法で日本コロムビアの株式の取得資金として使用とするという点です。完全子会社化という点については賛成してはいるものの、株主交換という手法がフェイス社、日本コロムビアの両株主にとって望ましくないということです。
まず、フェイス社が現在の株価で新株を発行すること自体がフェイス株主にとってマイナスになるということが挙げられます。RMBはフェイス社がかなり割安であるという意見を出しており、現在のPBR1.0を切る株価で新株発行をすることが既存株主にとってネガティブであるということ、現状買収に十分な現金を保有していることからわざわざ新株発行をする必要性はないということを中心に反対意見を出しております。また、日本コロムビアの株主にとっても流動性の低いフェイス株式をもらうよりも現金で支払ってもらったほうが全然得でしょうという点も挙げております。

帝国繊維(スパークス): 友好的な物言う株主(Friendly Activist)として有名なスパークスですが、初めて大量保有報告書で帝国繊維社に対しての要望を開示しました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6HP16KLVR401
今までは企業と直接対話を通じてアクションを促していたスパークスですが、あまりにも会社側に問題意識を持ってもらえずに聞き流されていると判断し、初めて他の株主にも考えを共有することでどうにか帝国繊維の経営陣を動かそうとしております。帝国繊維は溜まりに溜まった現金を成長投資や株主還元に充てておらず、殆どを現金、有価証券として保有しており、また事業シナジーが見込めないヒューリック株を取得するなど、資本効率が悪くなっているというのが要点です。

以上はほんの一握りの例ですが、アクティビストの行動は既存株主にとって有益な決断を企業に促していると言えると思います。割安に放置されている株がアクティビストの積極的な活動により、他の株主にとってはかなりプラスに働くことは多いです。個人的にも自分が保有している企業をアクティビストに保有されるということ自体はかなりポジティブです。今までいつか解消されるだろうと考えていた歪みが一気に解消される可能性が高まるからですね。
このように口うるさく企業に対して、また市場にたいして主張を行うアクティビストは株主にとって(特にバリュー投資家にとって)、重要な役割を果たしていることは自明かと思います。

企業側からしたら当然株主からとやかく言われたくないでしょうが、そのためには正しい行動を常に行わなくてはいけません。事業に対してはかなりハイレベルで議論、実行がされている企業が多いと思う一方で(が、故に機関投資家がコメントできることはほぼないですし)、財務戦略といった点で疎かな企業はまだまだ多いです。上場という選択肢を取った以上、株主価値を高めることが究極的な目標となりますので、しっかりと実行をしていってほしいものです。