個人投資家の機関投資家に対する優位性

株式市場は魑魅魍魎が跋扈する恐ろしい場所であり、素人が参加すると必ず痛い目をみる。そんなことはよく目にするかと思います。この話はある意味あたっていて、個人投資家のうちでもリテラシーのない人は相場の騰落に踊らされて、運が良くない限りは資金を失うことになるでしょう。
ネット上でもヘッジファンドの動きなどを非常に気にしている人が多いですが、バリュー投資家は企業価値の歪みを探索し、市場の需給バランス云々とは別の角度から投資を行うのみですので、正直機関投資家の動きが気になったりすることはありません。(歪みの是正にはこれらの機関投資家から投資されることもままありますが)
とはいえ、機関投資家の存在は気になるとは思います。今回は一般的に機関投資家に対して個人投資家の優位性を中心に考えを記載してみたいと思います。

1. 報告義務: 機関投資家は大部分の資産を年金基金/富裕層/個人などから預かって運用しています。それらの投資家に対してパフォーマンスについて都度都度報告しなくてはいけなく、パフォーマンスが悪化している際にはその説明に相当程度の時間が求められ、これは非常にストレスです。市場がなにかに過剰に反応し、一時的に個別企業単位では理由なく下げてしまうことは多々ありますが、その際にもいちいち対応しなくてはいけません。また、何か”仕事”をしていないとサボっているとまでは言いませんが、なにをしているのかという風に見られることもあり、長期的投資をうたっている機関投資家でも売買は比較的頻繁にされております。(3年間同じポートフォリオであることは殆どないといった意味です)また、投資先決定の際にも必要以上の取材等を行ったりします。工場見学したからといって良い投資先かどうかを確認できるかどうかなどほぼ不可能です。

2. 解約リスク: 基本的には上場株を取り扱っている機関投資家は常時mark to marketされている状態です。そして、預かり資産は常に解約されるリスクにさらされています。毎月、ないしは毎日解約されている状態にさらされているため、長期投資には向いていない形態となります。市場が仮にパニックになり、一時的に下げた場合、本来は仕込みどころでもあるわけですが、こういった際に解約されてしまうと、株式の持ち分をキャッシュ化しなくてはならず、売りたくない持ち分も売却しなくてはいけなくなってしまうのです。

3. 規模: 大抵の機関投資家は、個人投資家よりも相当大きな資産額を運用しております。運用額が大きいと、基本的には流動性が高く、時価総額が大きい企業にしか投資できなくなります。例えば時価総額100億円の企業の株式を5億かって、3倍になったとしても、+10億円であり、例えば5000億円を運用しているファンドにとってはあまりインパクトがないのです。わざわざ大成功してもインパクトが小さい投資先を探すことはコスト(時間含む)的にも合わないのです。また、ポジションを築くのにも売却するのにも、株式の流動性が低い企業だと大変時間がかかってしまうため、基本的には投資対象としないファンドが非常に多いです。従って、小型のバリュー投資を実施できる機関投資家はそもそも余り多くなく、魅力的であっても実は手を出せないということも多々あります。

以上の通り、個人投資家は自由に、自分のやりたい通りに投資実行可能であり、確率した投資スタイルを有する人にはむしろ好ましいことが分かるかと思います。個人で
きっと自分よりも優れているなどと考える必要はないのです。以下のリンクを見てみれば分かりますが、ヘッジファンドは毎年どんどん設立されている一方で、それ以上のペースで潰れてもいるのです。http://www.businessinsider.com/one-of-the-biggest-hedge-fund-launches-of-all-time-is-reportedly-shutting-down-2017-3

機関投資家、特にヘッジファンドのいいところは、投資リターンが上がらなくても運用資産の1-2%程度毎年を得られることですね。そりゃみんな運用額を大きくしたいと思うのも自然なわけです。(当然、大きな運用額で大きな投資利益を得ることができる人は、特に年金基金などの多大な資産を保有するところからすると純粋に最も優れているということになりますね)

マルチ商法 空売り

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF80K56TTDTG01

米国を中心に最近のパフォーマンスの低さや手数料の高さからヘッジファンド叩きが続いていますが、米国のヘッジファンド勢の層の厚さは日本とは比べ物にならないくらい大きな市場であり、いろいろなヘッジファンドマネージャーの考えを学ぶのは非常に勉強にもなります。

Bill Ackmanという著名なヘッジファンドマネージャーがいるのですが、Herbalifeに対してマルチ商法であると指摘しており、連邦取引委員会が差し止めに入るだろうという考えのもと、空売りを仕掛けました。(株が下がる方への賭け)

日本でも最近海外ヘッジファンドによる空売り案件が話題になってますが、このような投資手法もあるのですね。
Bill Ackmanは、マルチ商法に基づくビジネスは消費者に多大なる害を与えており上場企業として市場から評価されている事自体が看過できないと考えているということですね。

結構カフェやファミレスに行くとマルチ商法に勧誘しているような話し声は聞こえてきますよね。たまに付き合いで話を聞いてみることもありますが、大体みんな、もう誰にも頼らずに独立できるほどの収入がどんどん入ってくるよ等のとても”魅力的”な言葉を並べて誘ってくることが多いですね。

では、マルチ商法とはなにが問題なんでしょうか。
一応日本では違法ということではないようです。ねずみ講は金銭配当のみを目的としているものであり、こちらは違法です。基本的には金銭配当以外のなにかがあればOKであるという感じで行われているのが現状です。簡単に言ってしまえば、ピラミッドの上位のものが下位の者から搾取する構造ということでしょう。

一般的には、これマルチかな?と思ったら大体それはマルチであるという理解で結構かと思います。誘ってくる人はまずこれはマルチではなくて新しい流通の形態なの、といった感じでよく言ってくるかと思います。
結局ピラミッド構造を強化してくことが目的であり、ピラミッドの上層者が下層者から恩恵を受けるというのが基本ですね。有名所だとアムウェイがよく挙げられますが、今回は全国福利共済会(プライム共済)という組織について少し考察してみようと思います。

まず、全国福利共済会とは大企業に勤めていない人でも大企業並みの福利厚生を受けてほしいという概念から生まれたらしいです。
セミナーで勧誘することが多いみたいで、大体成功者っぽい人が講師として出てきます。セミナー参加は会員から誘われることが殆どです。創立者が天皇から表彰されたとか、いま自分は年収がこれくらいにまで上がっている、専業主婦だったが、夫に頼る必要も無いくらいの年収を得ているなどの話から始まります。ちなみに天皇からの表彰っていうのは、 本件の場合、公益のために私財を寄附した者に対するものなので、これはまあ儲けた分を良いことに寄付したっていうそれだけのことで、この全国福利共済とは正直関係ない事実っちゃ事実だと思います。

まあとにかく、大企業内の福利厚生を受けられるよ!会員が増えたらもっといい福利厚生を受けられるよ!っていうのがウリ文句です。ふーん、福利厚生ねぇ。。という感じの雰囲気をセミナー講師はおそらく参加者から感じるのでしょう。その後にP会員とK会員という概念の説明に入ります。P会員になると福利厚生を受けられるだけでなく、誰かをP会員にすることができたら、その分恩恵(金額)が得られると。K会員になると福利厚生を受けられるだけですと。
ここで面白い話をしてきます。P会員とはいわば全国福利共済の創業メンバーであると。みなさん、携帯電話が広まる前に、携帯電話のインフラに投資したいと思いますよね?それと一緒です!今後絶対に広まる全国福利厚生の創業メンバーになりたくありませんか?と。県民共済ってご存知ですよね?このくらい大きな組織になると思いませんか?と。

尚、現状の会員の構成は殆どがP会員だそうです。P会員は月4000円、K会員は月2000円。今後はK会員がどんどん増えて、今のうちにP会員になっておけば相当程度の収入が得られるようになると。
うーん、現状だけをみると、会員は福利厚生を受けたいというより、創業メンバーになりたいということが大きいとも言えなくはないですね。
月あたりの会員の定着率は月95%だと豪語しますが、逆にいうと月に5%は離脱しており、離脱した人が戻ってくる可能性は殆どないのではないでしょうか。月5%が抜けるというのは実は結構な離脱率であるとすこし算数をすると自明かと思います。(そしてその人達は基本的には二度と戻ってこないでしょう)

なるほど。。まあK会員がかなり増加すればP会員であると儲かると。この素晴らしいものを広めればいいんですと。

普通の感覚だと、素晴らしいものって普通に宣伝すればいいんじゃないですかね。これがいつもマルチ商法に対して思うことです。素晴らしい商品なら普通に宣伝すればいいんじゃない?県民共済は当然マルチっぽく拡大したものではないですよね?口コミって勝手に広がっていくものですよね?難しい概念だからしっかりと説明する必要があるからこのような形態が必要?新しい概念とは基本的になんで難しい概念と考えられるものです。電子商取引、電子書籍、スマートフォン、なんでもそうです。
というか、大企業並みの福利厚生を受けたいって別に難しい考えではないですよね。

まあ、借金してまで大量の在庫を抱えるということはないですので、気軽にできるというところがこの全国福利厚生共済のうまいところですね。

セミナーの最後には申込書を書くように言われます。曰く、とても複雑なので結局帰って一人でやると分からないことが殆どです。消印有効順で収入が変わることもあるので気をつけて!。。。。。煽ってきますね。。

月2000-4000円払って大企業の並の福利厚生ねぇ。。ホテルがちょっと安くなったりウォーターサーバー設置無料、ミネラルウォーターが安く買えると。。。

リンクが詳細です。世の中単純なことを複雑にしたほうが都合のいい人達がいるということにご留意下さい。
http://growth-and-smile.me/prime/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E7%A6%8F%E5%88%A9%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%85%B1%E6%B8%88%E4%BC%9A.pdf

いずれにせよ、上場してないので空売りは当然できないですね。

ちなみに、冒頭のBill AckmanはHerbalifeの空売り案件で相当現状かなり損をしております。当局などにマルチ商法を規制するように訴え、当局側も対応はしたものの、営業停止にはなっておらず、また米国以外の国で殆ど動きがなく、Herbalifeの業績はそこそこ順調に推移しているためです。
間違っていることを指摘すること自体は素晴らしいですし、大義もあると思いますが、かなりのポジションをそこに張ってしまったこと、また多国籍で運営していることなどの複雑性により、彼のファンドは現状かなり苦しんでいるようです。

NetflixにBetting on Zeroというドキュメンタリーがあり、この空売り案件について描かれているのでご興味あれば是非。

アグロカネショウ 売却

個人投資家を中心に自分のポートフォリオを公開していらっしゃる方はそこそこ多いと思います。著名投資家の方々はブログで全てのポートフォリオを公開し、毎日もしくは毎週株価をアップデートしている人も見受けられます。
ポジションを公開すること自体は個人的にはしようとは思えないです。その理由として変に自分のポジションにバイアスがかかってしまう気がするからです。公開することで、余りにもその銘柄に思いれが強くなってしまう気がし、見方を変える時や売りどきが難しくなってしまうと今のところ認識しているからです。

と、いうわけで今回は全売却した銘柄について振り返りの意味も込めてコメントしてみたいと思います。

アグロカネショウ(4955):果樹、野菜向け農薬専業

投資実行: 2017/4 (1,385円)
売却実行: 2017/8 (1,800円)
リターン: 1.3x

投資実行時のテーマ:
+比較的割安: EV/EBITDAで4.2x。設備投資額もかなり限定的。*ネットネット比率は100%程度でdeep valueとは言えないレベル
+成長性: アクティビスト的投資家のCornwall Capitalが2014年に投資実行。ユナイテッドマネーも投資しており、特にCornwall Capitalの教育的なものを感じる(中期経営計画を重視。また、中長期的な戦略を明示していた)また、国内における野菜の生産量は増加しているという背景あり。新薬も19年20年販売開始
+賠償金: 福島工場にかかる賠償金を東電に求めており、恐らくここで10億円規模の回収がされる
+収益性の高さ: EBTIDAマージンで15%以上、ROICも高く、安定的に多くのフリーキャッシュフローを稼ぐ見込みが相当見込めた

基本的には成長性があり、高FCFが見込める割には大分割安な企業であるということが投資テーマでした。
ターゲット株価の評価には毎期大体15億円程度のUnlevered FCF、永久成長率は1.0%、割引率を10%、その他ディスカウントを20%程度を使用しており、ターゲットは1600円としておりました。ただ、取得後にすぐにターゲット株価に近づいたため、長期投資有価証券や長期預け金も評価に含め、1800円にターゲットを修正しました。

これは当然ながら投資時には想定しておりませんでしたが、ヒアリ対策、マダニ感染対策というような理由で株価は高騰し、ターゲットである1800円に8月末に達したため全て売却しました。

そもそも圧倒的に割安というようなものでもなく、またターゲットに達するにはある程度時間がかかると思っていたのですが、偶然アグロカネショウに関してポジティブとされるニュースが出たので、想定よりも大分早期に売却をすることになりました。

売却時のEV/EBITDAは6.0x程度であり、まだ割安な感もありますが、その他に新規に投資したい、ポジションを増やしたいと思っている銘柄もありますので、全売却の決断をしました。

金投資を検討すべきか

金は一般的には安全資産として見られており、有事の際には資金を移動するべき対象とよく言われております。
個人的には、まだその論理に納得がしきっておらず、仮に”有事”とされる状況になっても資金を移すかどうかは正直決めきれておりません。

納得がいっていない理由は大雑把に言ってしまうと、適正な価格というものが計算できないからです。
企業価値なら、以前記載したとおり、理論上の価格を計算することは出来なくはないので、その価格を基準に割安だと判断できれば投資するということができます。
しかし、金の場合はいくらが適正価格か、計算が難しいです。基本的には需給で決まるものであり、金そのものは企業と異なり現金を生み出すことをしませんので、キャッシュフローの観点からの試算ができないからです。

安全資産と言われている金であっても、果たしてそれがその時点でどう割安なのか、割高なのかは、今後どの程度資金が金に向かってくるかを予想しないといけないわけです。
確かに破綻しようがないので、株や債券と異なり価値が0になることは基本的にはありません。しかし、用途の半分以上が宝飾用であるという金をどう評価すればいいのかは、基本的には世界の資金の流れを予想することが重要となってくるため、個人的にはかなり保有することは厳しいと感じております。当然ながら、金から資金が別のものに向かえば金の価格は非常に下がります。資源エネルギーとは異なり、過剰供給という点をそこまで考えなくてもいい一方で、金の使途はかなり限られているので、

金への投資を勧めている有名投資家もここ数年かなり多いと感じます。今後の見通しが悲観的であったり、いい投資先が見つからなかったりするということが多く、一先ず幾分かは金へ投資しているという感じです。
多くの投資家はヘッジファンドマネージャーですので、短期的にもリターンを下げることを嫌がります。ですので、一般的に株価と正の相関が低いとされている金へ投資することで、ポートフォリオ・マネジメント上、ヘッジをしている意味合いが強いと思います。毎月mark to marketする必要のない投資家はこのようなことを果たして本当にする必要があるのかは正直まだ個人的には分かっておりません。

スモールIPOは悪いことなのか?

少し前ですが、IPO後の株価が冴えない企業が散見されたこともあり、スモールIPO(時価総額が小さいままで上場すること)が多くの識者?に批判されていましたね。堀江貴文氏なども企業は大きくなってから上場したほうがいいという意見のようですが(例えばユニコーンになってからとか)、これは一体どういう考えなのでしょうか。

要は創業者やベンチャーキャピタルなどが”上場ゴール”という概念のもと、手っ取り早くリターンを確定し、その後の業績低迷などの影響は市場に押しつけることが問題であるということです。
後は未上場のうちに巨額な増資を行い、業界でのポジションを確固たるものにしてから上場したほうがいいというものでしょうか。恐らく未上場市場の方が一般的に長期的な視点で資金が投入されるため、未上場の時点でできるだけ資金調達しておいた方がいいという考え方だと思います。

確かに市場に対して期待ばかり持たせて上場時の株価を上げて、蓋をあけてみたら全然期待に沿えない業績で株価は低迷するということは問題ではあると思います。
しかし、上場株投資家の目線からすれば、IPOしてくれる企業というのはできるだけ多いほうがよいのではないかと考えております。確かに期待だけ煽って、実態はゴミのような企業というのはありますが、それでも上場時のオファリングの際には機関投資家を中心に値付けがされるわけであり、プロの目がしっかり入ったものであります。個人投資家にIPO株というレア物感を醸してはめ込むというのはどう考えても詐欺的ではありますが、プロの目を通じた値付けがされている以上、証券会社やベンチャーキャピタルだけが儲かる取引だと攻めるのもナンセンスであると思います。(加えて、創業者/VCなど既存の大株主にはロックアップが設定されておりますし)

未上場のうちに巨額な資金調達をしておいた方がいいという意見に対しては、結局企業からすればそれができればしていると思うんですよね。上場してしまうと成長のための長期的な目線にたった増資が難しいという見方もありますが、質のいい企業であると市場に見られる限り、当然ながら増資は可能であり、長期的な目線にたった資金だって当然入ってくるわけです(VCから未上場時に長期的な資金を調達できるという意見も、結局ファンドの期限がある限り所詮5-7年程度だと考えるべきですし)

以上の通り、時価総額が仮に小さい状態でもIPOしてもらえることで、上場株投資家の選択肢は広がりますし、思わぬ掘り出しものを保有する機会も得られますので、個人的にはどんどんとスモールIPOはしていってもらいたいと考えております。

企業側の目線にたつと、上場することのコスト(上場費用の金額だけではなく、諸々の開示や投資家説明、法的リスクの増加など)を考えると中々厳しい環境に身をおくことになりますので、非常に大変だろうなとは素直に思いますが。(当然割安だと思わない限りは個人的には全く手をだせません。そして、IPOは基本的には非常に市場から注目されるイベントですので、明らかに割安な価格になることは余りないです)