アクティビスト(物言う株主)の重要性

国内のアクティビスト(物言う株主)と言えば村上ファンドといったイメージがあるかと思います。村上ファンドは当時世論的には相当厳しい立場に追いやられてしまったと思います。更にインサイダー取引の疑惑で一気に日本におけるアクティビストの地位は悪くなったかと思います。まだ投資ファンドというものが根付いていなかった時期にスティール・パートナーズなども世間を騒がせた結果、かなりイメージは悪くなっているかと存じます。

しかし、改めてアクティビストの活動を見てみると、基本的にはかなり正しく、株主のためになることを提言していることが分かるかと存じます。以下はいくつかの例です。

パナホーム(オアシス): パナソニックによるパナホームの完全子会社化の取引が2016年末に発表されたが、パナホームの株主であるアクティビストのOasis ManagementがTOB価格が不当に安値だと主張しました。安値だと主張する理由として、パナホームが抱えるかなりの額の現金同等物、および関係会社預け金の存在です。親会社であるパナソニックに子会社の資金を預けている構図があり、パナホームが生んできた現金が成長投資やパナホームの株主還元に利用されず、親会社であるパナソニックにいいように財布として使われてしまっているというのが論点です。
パナホームは確かに長年割安銘柄として有名であり、その原因としてその豊富な現金が全く評価されていないという点が挙げられておりました。
結果的にパナソニックはTOBプレミアムを大幅に上げることになり、少数株主にもたらされるリターンはかなり上昇しました。

東芝プラント(オアシス): 経営危機に立たせられている東芝でしたが、子会社の東芝プラントシステムが850億円以上を預け金として東芝に貸し付けていたという状態を解消するようにアクティビストのOasis Managementが主張しました。不正会計で問題になっている、潰れそうな親会社に対して、自社の資金を銀行よりも有利な条件で貸し付けていることは正気の沙汰ではないですし、東芝プラントの少数株主(東芝以外の株主)からすると、そのような資金があるなら成長投資に回すか、株主還元してくれという話です。そもそもこのような預け金のせいで、株主からすると株主還元が期待できないということで長年割安になっているという背景もありました。
この主張も認められ、東芝プラントの預け金は解約を認められました。

フェイス/日本コロムビア(RMBキャピタル): フェイスおよび日本コロムビアの大株主であるRMBキャピタルは、フェイスによる日本コロムビアの完全子会社化に反対表明を出しました。ポイントとしては、フェイスが新株を発行しその株を株式交換という手法で日本コロムビアの株式の取得資金として使用とするという点です。完全子会社化という点については賛成してはいるものの、株主交換という手法がフェイス社、日本コロムビアの両株主にとって望ましくないということです。
まず、フェイス社が現在の株価で新株を発行すること自体がフェイス株主にとってマイナスになるということが挙げられます。RMBはフェイス社がかなり割安であるという意見を出しており、現在のPBR1.0を切る株価で新株発行をすることが既存株主にとってネガティブであるということ、現状買収に十分な現金を保有していることからわざわざ新株発行をする必要性はないということを中心に反対意見を出しております。また、日本コロムビアの株主にとっても流動性の低いフェイス株式をもらうよりも現金で支払ってもらったほうが全然得でしょうという点も挙げております。

帝国繊維(スパークス): 友好的な物言う株主(Friendly Activist)として有名なスパークスですが、初めて大量保有報告書で帝国繊維社に対しての要望を開示しました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6HP16KLVR401
今までは企業と直接対話を通じてアクションを促していたスパークスですが、あまりにも会社側に問題意識を持ってもらえずに聞き流されていると判断し、初めて他の株主にも考えを共有することでどうにか帝国繊維の経営陣を動かそうとしております。帝国繊維は溜まりに溜まった現金を成長投資や株主還元に充てておらず、殆どを現金、有価証券として保有しており、また事業シナジーが見込めないヒューリック株を取得するなど、資本効率が悪くなっているというのが要点です。

以上はほんの一握りの例ですが、アクティビストの行動は既存株主にとって有益な決断を企業に促していると言えると思います。割安に放置されている株がアクティビストの積極的な活動により、他の株主にとってはかなりプラスに働くことは多いです。個人的にも自分が保有している企業をアクティビストに保有されるということ自体はかなりポジティブです。今までいつか解消されるだろうと考えていた歪みが一気に解消される可能性が高まるからですね。
このように口うるさく企業に対して、また市場にたいして主張を行うアクティビストは株主にとって(特にバリュー投資家にとって)、重要な役割を果たしていることは自明かと思います。

企業側からしたら当然株主からとやかく言われたくないでしょうが、そのためには正しい行動を常に行わなくてはいけません。事業に対してはかなりハイレベルで議論、実行がされている企業が多いと思う一方で(が、故に機関投資家がコメントできることはほぼないですし)、財務戦略といった点で疎かな企業はまだまだ多いです。上場という選択肢を取った以上、株主価値を高めることが究極的な目標となりますので、しっかりと実行をしていってほしいものです。