マルチ商法 空売り

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF80K56TTDTG01

米国を中心に最近のパフォーマンスの低さや手数料の高さからヘッジファンド叩きが続いていますが、米国のヘッジファンド勢の層の厚さは日本とは比べ物にならないくらい大きな市場であり、いろいろなヘッジファンドマネージャーの考えを学ぶのは非常に勉強にもなります。

Bill Ackmanという著名なヘッジファンドマネージャーがいるのですが、Herbalifeに対してマルチ商法であると指摘しており、連邦取引委員会が差し止めに入るだろうという考えのもと、空売りを仕掛けました。(株が下がる方への賭け)

日本でも最近海外ヘッジファンドによる空売り案件が話題になってますが、このような投資手法もあるのですね。
Bill Ackmanは、マルチ商法に基づくビジネスは消費者に多大なる害を与えており上場企業として市場から評価されている事自体が看過できないと考えているということですね。

結構カフェやファミレスに行くとマルチ商法に勧誘しているような話し声は聞こえてきますよね。たまに付き合いで話を聞いてみることもありますが、大体みんな、もう誰にも頼らずに独立できるほどの収入がどんどん入ってくるよ等のとても”魅力的”な言葉を並べて誘ってくることが多いですね。

では、マルチ商法とはなにが問題なんでしょうか。
一応日本では違法ということではないようです。ねずみ講は金銭配当のみを目的としているものであり、こちらは違法です。基本的には金銭配当以外のなにかがあればOKであるという感じで行われているのが現状です。簡単に言ってしまえば、ピラミッドの上位のものが下位の者から搾取する構造ということでしょう。

一般的には、これマルチかな?と思ったら大体それはマルチであるという理解で結構かと思います。誘ってくる人はまずこれはマルチではなくて新しい流通の形態なの、といった感じでよく言ってくるかと思います。
結局ピラミッド構造を強化してくことが目的であり、ピラミッドの上層者が下層者から恩恵を受けるというのが基本ですね。有名所だとアムウェイがよく挙げられますが、今回は全国福利共済会(プライム共済)という組織について少し考察してみようと思います。

まず、全国福利共済会とは大企業に勤めていない人でも大企業並みの福利厚生を受けてほしいという概念から生まれたらしいです。
セミナーで勧誘することが多いみたいで、大体成功者っぽい人が講師として出てきます。セミナー参加は会員から誘われることが殆どです。創立者が天皇から表彰されたとか、いま自分は年収がこれくらいにまで上がっている、専業主婦だったが、夫に頼る必要も無いくらいの年収を得ているなどの話から始まります。ちなみに天皇からの表彰っていうのは、 本件の場合、公益のために私財を寄附した者に対するものなので、これはまあ儲けた分を良いことに寄付したっていうそれだけのことで、この全国福利共済とは正直関係ない事実っちゃ事実だと思います。

まあとにかく、大企業内の福利厚生を受けられるよ!会員が増えたらもっといい福利厚生を受けられるよ!っていうのがウリ文句です。ふーん、福利厚生ねぇ。。という感じの雰囲気をセミナー講師はおそらく参加者から感じるのでしょう。その後にP会員とK会員という概念の説明に入ります。P会員になると福利厚生を受けられるだけでなく、誰かをP会員にすることができたら、その分恩恵(金額)が得られると。K会員になると福利厚生を受けられるだけですと。
ここで面白い話をしてきます。P会員とはいわば全国福利共済の創業メンバーであると。みなさん、携帯電話が広まる前に、携帯電話のインフラに投資したいと思いますよね?それと一緒です!今後絶対に広まる全国福利厚生の創業メンバーになりたくありませんか?と。県民共済ってご存知ですよね?このくらい大きな組織になると思いませんか?と。

尚、現状の会員の構成は殆どがP会員だそうです。P会員は月4000円、K会員は月2000円。今後はK会員がどんどん増えて、今のうちにP会員になっておけば相当程度の収入が得られるようになると。
うーん、現状だけをみると、会員は福利厚生を受けたいというより、創業メンバーになりたいということが大きいとも言えなくはないですね。
月あたりの会員の定着率は月95%だと豪語しますが、逆にいうと月に5%は離脱しており、離脱した人が戻ってくる可能性は殆どないのではないでしょうか。月5%が抜けるというのは実は結構な離脱率であるとすこし算数をすると自明かと思います。(そしてその人達は基本的には二度と戻ってこないでしょう)

なるほど。。まあK会員がかなり増加すればP会員であると儲かると。この素晴らしいものを広めればいいんですと。

普通の感覚だと、素晴らしいものって普通に宣伝すればいいんじゃないですかね。これがいつもマルチ商法に対して思うことです。素晴らしい商品なら普通に宣伝すればいいんじゃない?県民共済は当然マルチっぽく拡大したものではないですよね?口コミって勝手に広がっていくものですよね?難しい概念だからしっかりと説明する必要があるからこのような形態が必要?新しい概念とは基本的になんで難しい概念と考えられるものです。電子商取引、電子書籍、スマートフォン、なんでもそうです。
というか、大企業並みの福利厚生を受けたいって別に難しい考えではないですよね。

まあ、借金してまで大量の在庫を抱えるということはないですので、気軽にできるというところがこの全国福利厚生共済のうまいところですね。

セミナーの最後には申込書を書くように言われます。曰く、とても複雑なので結局帰って一人でやると分からないことが殆どです。消印有効順で収入が変わることもあるので気をつけて!。。。。。煽ってきますね。。

月2000-4000円払って大企業の並の福利厚生ねぇ。。ホテルがちょっと安くなったりウォーターサーバー設置無料、ミネラルウォーターが安く買えると。。。

リンクが詳細です。世の中単純なことを複雑にしたほうが都合のいい人達がいるということにご留意下さい。
http://growth-and-smile.me/prime/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E7%A6%8F%E5%88%A9%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%85%B1%E6%B8%88%E4%BC%9A.pdf

いずれにせよ、上場してないので空売りは当然できないですね。

ちなみに、冒頭のBill AckmanはHerbalifeの空売り案件で相当現状かなり損をしております。当局などにマルチ商法を規制するように訴え、当局側も対応はしたものの、営業停止にはなっておらず、また米国以外の国で殆ど動きがなく、Herbalifeの業績はそこそこ順調に推移しているためです。
間違っていることを指摘すること自体は素晴らしいですし、大義もあると思いますが、かなりのポジションをそこに張ってしまったこと、また多国籍で運営していることなどの複雑性により、彼のファンドは現状かなり苦しんでいるようです。

NetflixにBetting on Zeroというドキュメンタリーがあり、この空売り案件について描かれているのでご興味あれば是非。

アクティビスト(物言う株主)の重要性

国内のアクティビスト(物言う株主)と言えば村上ファンドといったイメージがあるかと思います。村上ファンドは当時世論的には相当厳しい立場に追いやられてしまったと思います。更にインサイダー取引の疑惑で一気に日本におけるアクティビストの地位は悪くなったかと思います。まだ投資ファンドというものが根付いていなかった時期にスティール・パートナーズなども世間を騒がせた結果、かなりイメージは悪くなっているかと存じます。

しかし、改めてアクティビストの活動を見てみると、基本的にはかなり正しく、株主のためになることを提言していることが分かるかと存じます。以下はいくつかの例です。

パナホーム(オアシス): パナソニックによるパナホームの完全子会社化の取引が2016年末に発表されたが、パナホームの株主であるアクティビストのOasis ManagementがTOB価格が不当に安値だと主張しました。安値だと主張する理由として、パナホームが抱えるかなりの額の現金同等物、および関係会社預け金の存在です。親会社であるパナソニックに子会社の資金を預けている構図があり、パナホームが生んできた現金が成長投資やパナホームの株主還元に利用されず、親会社であるパナソニックにいいように財布として使われてしまっているというのが論点です。
パナホームは確かに長年割安銘柄として有名であり、その原因としてその豊富な現金が全く評価されていないという点が挙げられておりました。
結果的にパナソニックはTOBプレミアムを大幅に上げることになり、少数株主にもたらされるリターンはかなり上昇しました。

東芝プラント(オアシス): 経営危機に立たせられている東芝でしたが、子会社の東芝プラントシステムが850億円以上を預け金として東芝に貸し付けていたという状態を解消するようにアクティビストのOasis Managementが主張しました。不正会計で問題になっている、潰れそうな親会社に対して、自社の資金を銀行よりも有利な条件で貸し付けていることは正気の沙汰ではないですし、東芝プラントの少数株主(東芝以外の株主)からすると、そのような資金があるなら成長投資に回すか、株主還元してくれという話です。そもそもこのような預け金のせいで、株主からすると株主還元が期待できないということで長年割安になっているという背景もありました。
この主張も認められ、東芝プラントの預け金は解約を認められました。

フェイス/日本コロムビア(RMBキャピタル): フェイスおよび日本コロムビアの大株主であるRMBキャピタルは、フェイスによる日本コロムビアの完全子会社化に反対表明を出しました。ポイントとしては、フェイスが新株を発行しその株を株式交換という手法で日本コロムビアの株式の取得資金として使用とするという点です。完全子会社化という点については賛成してはいるものの、株主交換という手法がフェイス社、日本コロムビアの両株主にとって望ましくないということです。
まず、フェイス社が現在の株価で新株を発行すること自体がフェイス株主にとってマイナスになるということが挙げられます。RMBはフェイス社がかなり割安であるという意見を出しており、現在のPBR1.0を切る株価で新株発行をすることが既存株主にとってネガティブであるということ、現状買収に十分な現金を保有していることからわざわざ新株発行をする必要性はないということを中心に反対意見を出しております。また、日本コロムビアの株主にとっても流動性の低いフェイス株式をもらうよりも現金で支払ってもらったほうが全然得でしょうという点も挙げております。

帝国繊維(スパークス): 友好的な物言う株主(Friendly Activist)として有名なスパークスですが、初めて大量保有報告書で帝国繊維社に対しての要望を開示しました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6HP16KLVR401
今までは企業と直接対話を通じてアクションを促していたスパークスですが、あまりにも会社側に問題意識を持ってもらえずに聞き流されていると判断し、初めて他の株主にも考えを共有することでどうにか帝国繊維の経営陣を動かそうとしております。帝国繊維は溜まりに溜まった現金を成長投資や株主還元に充てておらず、殆どを現金、有価証券として保有しており、また事業シナジーが見込めないヒューリック株を取得するなど、資本効率が悪くなっているというのが要点です。

以上はほんの一握りの例ですが、アクティビストの行動は既存株主にとって有益な決断を企業に促していると言えると思います。割安に放置されている株がアクティビストの積極的な活動により、他の株主にとってはかなりプラスに働くことは多いです。個人的にも自分が保有している企業をアクティビストに保有されるということ自体はかなりポジティブです。今までいつか解消されるだろうと考えていた歪みが一気に解消される可能性が高まるからですね。
このように口うるさく企業に対して、また市場にたいして主張を行うアクティビストは株主にとって(特にバリュー投資家にとって)、重要な役割を果たしていることは自明かと思います。

企業側からしたら当然株主からとやかく言われたくないでしょうが、そのためには正しい行動を常に行わなくてはいけません。事業に対してはかなりハイレベルで議論、実行がされている企業が多いと思う一方で(が、故に機関投資家がコメントできることはほぼないですし)、財務戦略といった点で疎かな企業はまだまだ多いです。上場という選択肢を取った以上、株主価値を高めることが究極的な目標となりますので、しっかりと実行をしていってほしいものです。