バフェットやグレアムの過去の投資から感じられる、日本市場の異常性

Warren Buffett関連の書籍は大量に出ており、ネットの関連記事も豊富で、毎年の株主への手紙もあることから、Berkshireの投資について学ぶことは容易に可能であり、現代の投資家は大変恵まれていると言えると思います。
彼の投資手法、対象がどのように変遷していったの詳細は色々な書籍に書いてありますが、ざっくりと言えば、運用資産が小さいうちは所謂ネットネット株などのディープバリューと呼ばれる超割安株(Classic Graham Style)を中心に投資しており、運用資産が大きくなるにつれて、そういった対象が枯渇したこともあり、チャーリー・マンガーやフィル・フィッシャーの手法を取り入れ、Moatのあるビジネスをそこそこの値段で取得するという手法に変遷していくことが分かります。
バフェットは1969年には運用資産が大きくなったこともあり、超割安株に投資することが困難になり、また今までプライベートを犠牲にしてきたことに嫌気がさしたことで、パートナーシップを解散しております。(結局はバークシャー・ハサウェイを投資ビークルとして引き続き運営し続けるわけではありますが)
興味深いのは、株主への手紙にて、「今までのようなリターンを今後出すようなことはできないので、そこそこのリターンでいい人はバークシャー・ハサウェイの株と交換してもらい、それ以外の方は現金化するか、他によい投資家を紹介する」ということを言っている点です。
初期のバフェットは師匠でもあるGrahamの投資手法であるネットネット株への投資によって驚異的なリターンを出してきたということは有名です。ネットネット株への投資は、Cigar butt(シケモク)投資とも呼ばれており、道端に落ちているシケモクの最後の一吸いを無料でしようというスタイルです。シケモクと呼ばれるくらいなので、ビジネスとしては悪化(赤字だったり、ネガティブキャッシュフロー)しているものが対象とされることが殆どであることが彼らの過去の投資案件からも分かるかと思います。
流動資産-総負債>時価総額というあり得ないバリュエーションがついている企業であれば、その歪みはいずれ解消されるであろうから、そういった企業に投資して、最後の一吸いを無料で楽しもうというコンセプトです。こういった超割安性は、ファンダメンタルの弱さに市場が過剰に反応した際に生じることが多いことが過去の米国の案件からは伺えます。
では、日本における超割安企業(ネットネット or EV<0)はどうでしょうか。
当然、連続赤字企業であったり、パチンコ関連といったような業界的に悪化傾向であったりする企業が超割安になっていることが多いですが、キャッシュフロー創出能力が安定的であり、そこまで暗い未来が待っているようにも思えないような企業にも関わらず超割安になっていることがあるのです。
以前、売却銘柄として挙げた、ムサシだったりヤガミに関しても、そのままの運営では明るい未来が待っている企業であるとは思えないものの、ちゃんとキャッシュフローを創出する企業がかなり割安に放置されていることが見受けられるのが日本市場の特徴だと考えております。
理由に関しては色々と考えられるものの、以前にも書きましたがPL・PER重視の投資家が多い点に加え、スモール・マイクロキャップの主要投資家であると想定される個人投資家勢におけるバリュエーションの考え方が、米国などと比較して成熟していないことが原因なのではないかと思います。
つまり、企業の過去における安定的なキャッシュの積み上げを市場が全く評価していないケースが存在しているということなのです。
こういった傾向は歪みの是正が進まないようなリスクがある一方で、普通~良い企業を超割安で保有する機会があるということでもあるので、個人的には現在の日本市場はとても魅力的なマーケットに見えて仕方がないのです。
個人的にも、運用資産が大きかったファンドに在籍していた時と比較して、割安というものの定義がかなり厳しく(例えばEV/EBITDAの感覚)なってきております。(mid-large capではアホみたいなバリュエーションがついていることは流石に日本でもあんまりないです)

毎日、毎分、毎秒株価を見ることの弊害

投資を初めてみると分かりますが、殆ど全ての人が毎日の株価を気にするものです。人によっては毎時間、毎分、頻繁にチェックするということもあるでしょう。デイトレーダーがこういったことをするのは当然ですが、中長期投資を謳っている人も同様のことをするケースが殆どです。
こういった傾向は、機関投資家、専業個人投資家に多くみられ、兼業の個人投資家でもよくみられます。
決算など何もその企業にとって新しいニュースが出ていないのに、株価を気にする。これは中長期投資を謳っている人にとってはおかしいことに思えます。仮に株価が数%上下したところで、なにかできるのでしょうか。ターゲット株価にかなり近づいている時には株価チェックも必要かもしれませんが、基本的には時間の無駄ですし、何より日々の株価の動きをみることは精神的にも無意味に疲弊します。
先日ノーベル経済学賞をとったリチャード・セイラー氏が衝撃を受けたといっている、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが提唱したプロスペクト理論でも述べられていますが、”人は利益を得たときの喜びよりも損をしたときの悲しみの方が感情としての影響としては大きい”ということは実感ベースでも分かるかと思います。
全体としては株価が取得時よりも上がっていたとしても、毎日チェックすることで、前日よりも上がった下がったと、無意味に一喜一憂してしまうという事実を認識する必要があるかと思います。実際、日々の株価推移をまとめて、毎日コメントすることは中長期投資家にとっては無意味だと考えております。それこそ、ファンダメンタル上はなにも変化はしていないのですから。
バリュー投資家全員が目指すと言っても過言ではないWarren BuffetのBerkshire Hathawayの株価推移を、最大の敬意も込めて例としてみてみます。.jpg
1985年に1,730ドルであった株価は32年後の2017年では281,950ドルです。これは約160倍であり、年率では17%程度という驚異的なリターンだということは分かるかと思います。こんなに素晴らしいリターンですが、例えば株価を毎日チェックしていたらどの程度上下していたのでしょうか。
簡単に見てみたところ、前日比で株価がマイナスであったのは3,807日、プラスであったのは3,801日、変化なしであったのが636日です。
このように株価は日々上下しながら動くものですし、その上下自体に意味がほぼないことも分かるのではないでしょうか。
{ちなみに最も値上がりしたのは2008/11/21の16%(これは金融危機後にかなりBerkshireの株価が下がっているときの中で)、最も値下がりしたのはブラックマンデーの1987/10/19の-19%です。}
人間の脳はあまり優れていないと個人的には思っており(少なくとも私は)、無意味なノイズからはできるだけ守ってやる必要があるかと思います。本当に必要なときのみ、株価のチェックをしたほうがいいのではないかというのが持論です。
株価の動きを追いすぎることで、自分の投資テーマに過剰に弱気になったり強気になってしまい、間違った判断をすることをできるだけ防ぐことが重要です。

株価というのは魔力があり、どうしてもチェックしたくなってしまいます。自分でルールを作って、1週間に一度、1ヶ月に一度確認するくらいが脳へのダメージも減らし、時間も有効に使えると思うのです。

一日に一回以上見る人も非常に多いかと思いますが、、これは言わずもがなですね。

 

飽くまで、中長期のバリュー投資家に向けた話です。

マルチ商法 空売り

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF80K56TTDTG01

米国を中心に最近のパフォーマンスの低さや手数料の高さからヘッジファンド叩きが続いていますが、米国のヘッジファンド勢の層の厚さは日本とは比べ物にならないくらい大きな市場であり、いろいろなヘッジファンドマネージャーの考えを学ぶのは非常に勉強にもなります。

Bill Ackmanという著名なヘッジファンドマネージャーがいるのですが、Herbalifeに対してマルチ商法であると指摘しており、連邦取引委員会が差し止めに入るだろうという考えのもと、空売りを仕掛けました。(株が下がる方への賭け)

日本でも最近海外ヘッジファンドによる空売り案件が話題になってますが、このような投資手法もあるのですね。
Bill Ackmanは、マルチ商法に基づくビジネスは消費者に多大なる害を与えており上場企業として市場から評価されている事自体が看過できないと考えているということですね。

結構カフェやファミレスに行くとマルチ商法に勧誘しているような話し声は聞こえてきますよね。たまに付き合いで話を聞いてみることもありますが、大体みんな、もう誰にも頼らずに独立できるほどの収入がどんどん入ってくるよ等のとても”魅力的”な言葉を並べて誘ってくることが多いですね。

では、マルチ商法とはなにが問題なんでしょうか。
一応日本では違法ということではないようです。ねずみ講は金銭配当のみを目的としているものであり、こちらは違法です。基本的には金銭配当以外のなにかがあればOKであるという感じで行われているのが現状です。簡単に言ってしまえば、ピラミッドの上位のものが下位の者から搾取する構造ということでしょう。

一般的には、これマルチかな?と思ったら大体それはマルチであるという理解で結構かと思います。誘ってくる人はまずこれはマルチではなくて新しい流通の形態なの、といった感じでよく言ってくるかと思います。
結局ピラミッド構造を強化してくことが目的であり、ピラミッドの上層者が下層者から恩恵を受けるというのが基本ですね。有名所だとアムウェイがよく挙げられますが、今回は全国福利共済会(プライム共済)という組織について少し考察してみようと思います。

まず、全国福利共済会とは大企業に勤めていない人でも大企業並みの福利厚生を受けてほしいという概念から生まれたらしいです。
セミナーで勧誘することが多いみたいで、大体成功者っぽい人が講師として出てきます。セミナー参加は会員から誘われることが殆どです。創立者が天皇から表彰されたとか、いま自分は年収がこれくらいにまで上がっている、専業主婦だったが、夫に頼る必要も無いくらいの年収を得ているなどの話から始まります。ちなみに天皇からの表彰っていうのは、 本件の場合、公益のために私財を寄附した者に対するものなので、これはまあ儲けた分を良いことに寄付したっていうそれだけのことで、この全国福利共済とは正直関係ない事実っちゃ事実だと思います。

まあとにかく、大企業内の福利厚生を受けられるよ!会員が増えたらもっといい福利厚生を受けられるよ!っていうのがウリ文句です。ふーん、福利厚生ねぇ。。という感じの雰囲気をセミナー講師はおそらく参加者から感じるのでしょう。その後にP会員とK会員という概念の説明に入ります。P会員になると福利厚生を受けられるだけでなく、誰かをP会員にすることができたら、その分恩恵(金額)が得られると。K会員になると福利厚生を受けられるだけですと。
ここで面白い話をしてきます。P会員とはいわば全国福利共済の創業メンバーであると。みなさん、携帯電話が広まる前に、携帯電話のインフラに投資したいと思いますよね?それと一緒です!今後絶対に広まる全国福利厚生の創業メンバーになりたくありませんか?と。県民共済ってご存知ですよね?このくらい大きな組織になると思いませんか?と。

尚、現状の会員の構成は殆どがP会員だそうです。P会員は月4000円、K会員は月2000円。今後はK会員がどんどん増えて、今のうちにP会員になっておけば相当程度の収入が得られるようになると。
うーん、現状だけをみると、会員は福利厚生を受けたいというより、創業メンバーになりたいということが大きいとも言えなくはないですね。
月あたりの会員の定着率は月95%だと豪語しますが、逆にいうと月に5%は離脱しており、離脱した人が戻ってくる可能性は殆どないのではないでしょうか。月5%が抜けるというのは実は結構な離脱率であるとすこし算数をすると自明かと思います。(そしてその人達は基本的には二度と戻ってこないでしょう)

なるほど。。まあK会員がかなり増加すればP会員であると儲かると。この素晴らしいものを広めればいいんですと。

普通の感覚だと、素晴らしいものって普通に宣伝すればいいんじゃないですかね。これがいつもマルチ商法に対して思うことです。素晴らしい商品なら普通に宣伝すればいいんじゃない?県民共済は当然マルチっぽく拡大したものではないですよね?口コミって勝手に広がっていくものですよね?難しい概念だからしっかりと説明する必要があるからこのような形態が必要?新しい概念とは基本的になんで難しい概念と考えられるものです。電子商取引、電子書籍、スマートフォン、なんでもそうです。
というか、大企業並みの福利厚生を受けたいって別に難しい考えではないですよね。

まあ、借金してまで大量の在庫を抱えるということはないですので、気軽にできるというところがこの全国福利厚生共済のうまいところですね。

セミナーの最後には申込書を書くように言われます。曰く、とても複雑なので結局帰って一人でやると分からないことが殆どです。消印有効順で収入が変わることもあるので気をつけて!。。。。。煽ってきますね。。

月2000-4000円払って大企業の並の福利厚生ねぇ。。ホテルがちょっと安くなったりウォーターサーバー設置無料、ミネラルウォーターが安く買えると。。。

リンクが詳細です。世の中単純なことを複雑にしたほうが都合のいい人達がいるということにご留意下さい。
http://growth-and-smile.me/prime/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E7%A6%8F%E5%88%A9%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%85%B1%E6%B8%88%E4%BC%9A.pdf

いずれにせよ、上場してないので空売りは当然できないですね。

ちなみに、冒頭のBill AckmanはHerbalifeの空売り案件で相当現状かなり損をしております。当局などにマルチ商法を規制するように訴え、当局側も対応はしたものの、営業停止にはなっておらず、また米国以外の国で殆ど動きがなく、Herbalifeの業績はそこそこ順調に推移しているためです。
間違っていることを指摘すること自体は素晴らしいですし、大義もあると思いますが、かなりのポジションをそこに張ってしまったこと、また多国籍で運営していることなどの複雑性により、彼のファンドは現状かなり苦しんでいるようです。

NetflixにBetting on Zeroというドキュメンタリーがあり、この空売り案件について描かれているのでご興味あれば是非。

長期投資の難しい点 売りどき

バリュー投資は市場の歪みが解消されるのを待つ必要があるため、長期投資( 少なくとも 3-5年はかかると思ってよいかと)が基本となるかと思います。
実際に長期投資目的でも、どのタイミングで売るべきなのかという大きな課題はあります。自分が割安だと思って取得した企業がしっかりとその後に株価が上がった場合、いつ売ればいいのかという問題に直面します。

個人的には企業価値アプローチ(DCF法)ネットネット比率などその他複数の指標などをベースに目標株価というものを設定はするわけですが、その目標株価は一般的に見ればまだまだ割安水準(少なくとも割高ではない)であることが多いのでまだ保有すべきかなどと非常に迷うケースはあります。

この判断に関しては銘柄によるとしか言えませんが、ビジネスが非常に強く今後もキャッシュフローを継続的に生み出していくことが強く見込まれる銘柄に関しては全ては売らずに保有するようにしております。一方であまり市場、業界的、競争環境的にはあまり強くなく、今後そこまで継続的なキャッシュフローが見込まれない場合には素直に株価が十分に上昇したら売却する方針です。

割安度合いがある程度解消されてもまだ上昇余地があると思われる銘柄に関しては以下のような手法を取ることも可能です。著名なバリュー投資家のPeter Cundilが取っていたとされている手法です。

まず、株価が投資後に2倍になった場合持ち分の半分を売却し、これで取得にかかった費用は完全に回収され、半分を長期保有することで更なるアップサイドを資金を失うリスクなし(元本割れリスクなし)で享受することができるというものです。
株価が1.5倍の場合でしたら、2/3を売って1/3を長期保有するということで、同じような仕組みを得ることはできます。

バリュー投資家はバフェット以外はうまくいってないのか?

よくバリュー投資の話になりますと、でも結局バフェット以外うまくいってないよねという話になることがあるかと思います。
これは金融機関の人と話していてもそういったことを聞くことも何度かありましたので、中々染み付いた考え方なのかなと感じます。

これにはいくつか訂正というか、以下のような事実があるかと思いますので簡単に述べさせていただきます。

バフェットはもう純粋なバリュー投資家ではない?
これはYesと言えるでしょう。ウォーレン・バフェットは70年代くらいまでは純粋なバリュー投資家でしたが、当時のパートナーシップを解散し、現在のBerkshire Hathawayという株式会社の形態になる少し前くらいからかなり大規模になってしまったため、純粋なバリュー投資(ネットネット株やそれに近いもの)が段々と出来なくなってしまったという事実があります。運用額が大規模になるとどうしてもこのジレンマにぶつかることになり、バフェット自体も投資手法を変えております。実際、Berkshireの投資として一番有名なものとしてコカ・コーラがあるかと思いますが、投資した1987-88年の段階でEV/EBITDA倍率で9-11倍程度であり、バリュー投資というよりはGARP投資であることが分かるかと思います。最近の事例でいうとIBMやAppleなどへの投資からも分かる通り、決して格安で取引されているような銘柄に投資しているわけではないということが自明かと思います。

バフェットのリターン数値を見ても分かる通り、昔のほうがリターン%自体は高いです。

当然、大きな額を運用して高いリターン%を出すことが一番すごいことですので、未だにBerkshireがもたらしているリターンは凄まじいといえますが、運用額が小さいうちは”今”の彼の投資手法(GARP的な)を真似なくてもいいのではないかというところがポイントです。

実際現在バフェットが実施している、堀をもつビジネス(キャッシュフローが今後共に確実に見込める)をまあまあの値段で買うということは結構難度が高い話ではあります。日本国内で言えば、次のユニクロ、ソフトバンクをある程度見抜く必要があるといったような話ですので、純粋なバリュー投資(明らかな市場の歪みに投資)と比較すると不確実性は高いものと思われます。

バリュー投資家で他に成功者はいない?
成功の定義によりますが、明らかに市場を大きくアウトパフォームしている投資家はかなり多くいます。
Joel Greenblatt、Guy Spier、Monish Pabraiなどがまず挙げられますし、自己資金でしたり、比較的小規模の運用を行っている投資家では多く存在することは少し検索すれば分かります。
また、国内でもバリュー投資家と検索するとかなりいいリターンをあげていらっしゃる個人投資家の方々がいることにも分かるかと思います。

以下の記事などによってバリュー投資家で成功者はいないと思ってしまわれる方も多いかとは思いますが、上記の通り、バリュー投資そのものがバフェットの影響力もあり拡大解釈されていること、基本的には小規模な運用(とはいえ、数十億までは問題ないかとも思います)に向いていることなどが原因かと思います。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM17032_X10C14A3000000/