長期投資の難しい点 売りどき

バリュー投資は市場の歪みが解消されるのを待つ必要があるため、長期投資( 少なくとも 3-5年はかかると思ってよいかと)が基本となるかと思います。
実際に長期投資目的でも、どのタイミングで売るべきなのかという大きな課題はあります。自分が割安だと思って取得した企業がしっかりとその後に株価が上がった場合、いつ売ればいいのかという問題に直面します。

個人的には企業価値アプローチ(DCF法)ネットネット比率などその他複数の指標などをベースに目標株価というものを設定はするわけですが、その目標株価は一般的に見ればまだまだ割安水準(少なくとも割高ではない)であることが多いのでまだ保有すべきかなどと非常に迷うケースはあります。

この判断に関しては銘柄によるとしか言えませんが、ビジネスが非常に強く今後もキャッシュフローを継続的に生み出していくことが強く見込まれる銘柄に関しては全ては売らずに保有するようにしております。一方であまり市場、業界的、競争環境的にはあまり強くなく、今後そこまで継続的なキャッシュフローが見込まれない場合には素直に株価が十分に上昇したら売却する方針です。

割安度合いがある程度解消されてもまだ上昇余地があると思われる銘柄に関しては以下のような手法を取ることも可能です。著名なバリュー投資家のPeter Cundilが取っていたとされている手法です。

まず、株価が投資後に2倍になった場合持ち分の半分を売却し、これで取得にかかった費用は完全に回収され、半分を長期保有することで更なるアップサイドを資金を失うリスクなし(元本割れリスクなし)で享受することができるというものです。
株価が1.5倍の場合でしたら、2/3を売って1/3を長期保有するということで、同じような仕組みを得ることはできます。

バリュー投資家はバフェット以外はうまくいってないのか?

よくバリュー投資の話になりますと、でも結局バフェット以外うまくいってないよねという話になることがあるかと思います。
これは金融機関の人と話していてもそういったことを聞くことも何度かありましたので、中々染み付いた考え方なのかなと感じます。

これにはいくつか訂正というか、以下のような事実があるかと思いますので簡単に述べさせていただきます。

バフェットはもう純粋なバリュー投資家ではない?
これはYesと言えるでしょう。ウォーレン・バフェットは70年代くらいまでは純粋なバリュー投資家でしたが、当時のパートナーシップを解散し、現在のBerkshire Hathawayという株式会社の形態になる少し前くらいからかなり大規模になってしまったため、純粋なバリュー投資(ネットネット株やそれに近いもの)が段々と出来なくなってしまったという事実があります。運用額が大規模になるとどうしてもこのジレンマにぶつかることになり、バフェット自体も投資手法を変えております。実際、Berkshireの投資として一番有名なものとしてコカ・コーラがあるかと思いますが、投資した1987-88年の段階でEV/EBITDA倍率で9-11倍程度であり、バリュー投資というよりはGARP投資であることが分かるかと思います。最近の事例でいうとIBMやAppleなどへの投資からも分かる通り、決して格安で取引されているような銘柄に投資しているわけではないということが自明かと思います。

バフェットのリターン数値を見ても分かる通り、昔のほうがリターン%自体は高いです。

当然、大きな額を運用して高いリターン%を出すことが一番すごいことですので、未だにBerkshireがもたらしているリターンは凄まじいといえますが、運用額が小さいうちは”今”の彼の投資手法(GARP的な)を真似なくてもいいのではないかというところがポイントです。

実際現在バフェットが実施している、堀をもつビジネス(キャッシュフローが今後共に確実に見込める)をまあまあの値段で買うということは結構難度が高い話ではあります。日本国内で言えば、次のユニクロ、ソフトバンクをある程度見抜く必要があるといったような話ですので、純粋なバリュー投資(明らかな市場の歪みに投資)と比較すると不確実性は高いものと思われます。

バリュー投資家で他に成功者はいない?
成功の定義によりますが、明らかに市場を大きくアウトパフォームしている投資家はかなり多くいます。
Joel Greenblatt、Guy Spier、Monish Pabraiなどがまず挙げられますし、自己資金でしたり、比較的小規模の運用を行っている投資家では多く存在することは少し検索すれば分かります。
また、国内でもバリュー投資家と検索するとかなりいいリターンをあげていらっしゃる個人投資家の方々がいることにも分かるかと思います。

以下の記事などによってバリュー投資家で成功者はいないと思ってしまわれる方も多いかとは思いますが、上記の通り、バリュー投資そのものがバフェットの影響力もあり拡大解釈されていること、基本的には小規模な運用(とはいえ、数十億までは問題ないかとも思います)に向いていることなどが原因かと思います。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM17032_X10C14A3000000/

もっと簡単な割安銘柄の評価方法(ネットネット株)

以前、企業価値アプローチなどをご紹介し、保守的に試算された株式価値が株式市場で評価されているもの(時価総額)より大分割安であればその銘柄はバリュー投資銘柄として適しているのではないかということをお伝えしたかと存じます。

しかし、この手法自体はそこそこ複雑であり、すぐに導入することが難しいともいえます。ですので、もっと簡単に割安かどうかを判断する手法もご紹介させていただきます。個人的には企業価値アプローチと今回紹介する手法、またその他いくつかの指標をベースに割安銘柄を探して投資をしています。

ネットネット株
あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、非常にシンプルな考え方です。
要は企業が持っている流動資産とその他の投資有価証券、現金化可能な遊休資産等から負債を引いたものが時価総額の値の2/3以下なら投資するというものです。

流動資産(+その他投資有価証券)- 合計負債 > 時価総額 * 2/3

これは何を表しているかというとその時点で企業が持っている流動資産(現金、売掛金、有価証券等)から負債(将来的にキャシュアウトするもの)を引いたものが全て株主に帰属するということであり、その額が現在市場で取引されている時価総額よりも30%以上低いケースであるということです。

流動資産-合計負債が100億円で、時価総額が66億円であるといった具合です。
この場合、事業を畳んだとしても株主は合計で少なくとも34億円±のプラスになるというものです。尚、固定資産をこの計算に入れていないのは、固定資産の場合実際には現金化ができなかったりするものも含まれるので、より保守的に見ているということになります。(PBRは固定資産も含めた指標になりますね)

この投資アイディアは企業のバランスシート(貸借対照表,BS)にのみ着目した見方です。将来企業が生み出すキャッシュフローなどは考慮せず、現段階で十分に割安な企業を見つけるのに適した考え方です。

これはバリュー投資の祖とされているベンジャミン・グラハムが50年以上前に「賢明なる投資家(Intelligent Investor)」という本に書いた投資手法であり、オマハの賢人/投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットを始め多くの投資家に影響を与えているものです。

グラハムの偉大なところは、50年以上経っても未だに投資戦略として機能するものを生み出したという点かと思います。