毎日、毎分、毎秒株価を見ることの弊害

投資を初めてみると分かりますが、殆ど全ての人が毎日の株価を気にするものです。人によっては毎時間、毎分、頻繁にチェックするということもあるでしょう。デイトレーダーがこういったことをするのは当然ですが、中長期投資を謳っている人も同様のことをするケースが殆どです。
こういった傾向は、機関投資家、専業個人投資家に多くみられ、兼業の個人投資家でもよくみられます。
決算など何もその企業にとって新しいニュースが出ていないのに、株価を気にする。これは中長期投資を謳っている人にとってはおかしいことに思えます。仮に株価が数%上下したところで、なにかできるのでしょうか。ターゲット株価にかなり近づいている時には株価チェックも必要かもしれませんが、基本的には時間の無駄ですし、何より日々の株価の動きをみることは精神的にも無意味に疲弊します。
先日ノーベル経済学賞をとったリチャード・セイラー氏が衝撃を受けたといっている、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが提唱したプロスペクト理論でも述べられていますが、”人は利益を得たときの喜びよりも損をしたときの悲しみの方が感情としての影響としては大きい”ということは実感ベースでも分かるかと思います。
全体としては株価が取得時よりも上がっていたとしても、毎日チェックすることで、前日よりも上がった下がったと、無意味に一喜一憂してしまうという事実を認識する必要があるかと思います。実際、日々の株価推移をまとめて、毎日コメントすることは中長期投資家にとっては無意味だと考えております。それこそ、ファンダメンタル上はなにも変化はしていないのですから。
バリュー投資家全員が目指すと言っても過言ではないWarren BuffetのBerkshire Hathawayの株価推移を、最大の敬意も込めて例としてみてみます。.jpg
1985年に1,730ドルであった株価は32年後の2017年では281,950ドルです。これは約160倍であり、年率では17%程度という驚異的なリターンだということは分かるかと思います。こんなに素晴らしいリターンですが、例えば株価を毎日チェックしていたらどの程度上下していたのでしょうか。
簡単に見てみたところ、前日比で株価がマイナスであったのは3,807日、プラスであったのは3,801日、変化なしであったのが636日です。
このように株価は日々上下しながら動くものですし、その上下自体に意味がほぼないことも分かるのではないでしょうか。
{ちなみに最も値上がりしたのは2008/11/21の16%(これは金融危機後にかなりBerkshireの株価が下がっているときの中で)、最も値下がりしたのはブラックマンデーの1987/10/19の-19%です。}
人間の脳はあまり優れていないと個人的には思っており(少なくとも私は)、無意味なノイズからはできるだけ守ってやる必要があるかと思います。本当に必要なときのみ、株価のチェックをしたほうがいいのではないかというのが持論です。
株価の動きを追いすぎることで、自分の投資テーマに過剰に弱気になったり強気になってしまい、間違った判断をすることをできるだけ防ぐことが重要です。

株価というのは魔力があり、どうしてもチェックしたくなってしまいます。自分でルールを作って、1週間に一度、1ヶ月に一度確認するくらいが脳へのダメージも減らし、時間も有効に使えると思うのです。

一日に一回以上見る人も非常に多いかと思いますが、、これは言わずもがなですね。

 

飽くまで、中長期のバリュー投資家に向けた話です。

マルチ商法 空売り

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF80K56TTDTG01

米国を中心に最近のパフォーマンスの低さや手数料の高さからヘッジファンド叩きが続いていますが、米国のヘッジファンド勢の層の厚さは日本とは比べ物にならないくらい大きな市場であり、いろいろなヘッジファンドマネージャーの考えを学ぶのは非常に勉強にもなります。

Bill Ackmanという著名なヘッジファンドマネージャーがいるのですが、Herbalifeに対してマルチ商法であると指摘しており、連邦取引委員会が差し止めに入るだろうという考えのもと、空売りを仕掛けました。(株が下がる方への賭け)

日本でも最近海外ヘッジファンドによる空売り案件が話題になってますが、このような投資手法もあるのですね。
Bill Ackmanは、マルチ商法に基づくビジネスは消費者に多大なる害を与えており上場企業として市場から評価されている事自体が看過できないと考えているということですね。

結構カフェやファミレスに行くとマルチ商法に勧誘しているような話し声は聞こえてきますよね。たまに付き合いで話を聞いてみることもありますが、大体みんな、もう誰にも頼らずに独立できるほどの収入がどんどん入ってくるよ等のとても”魅力的”な言葉を並べて誘ってくることが多いですね。

では、マルチ商法とはなにが問題なんでしょうか。
一応日本では違法ということではないようです。ねずみ講は金銭配当のみを目的としているものであり、こちらは違法です。基本的には金銭配当以外のなにかがあればOKであるという感じで行われているのが現状です。簡単に言ってしまえば、ピラミッドの上位のものが下位の者から搾取する構造ということでしょう。

一般的には、これマルチかな?と思ったら大体それはマルチであるという理解で結構かと思います。誘ってくる人はまずこれはマルチではなくて新しい流通の形態なの、といった感じでよく言ってくるかと思います。
結局ピラミッド構造を強化してくことが目的であり、ピラミッドの上層者が下層者から恩恵を受けるというのが基本ですね。有名所だとアムウェイがよく挙げられますが、今回は全国福利共済会(プライム共済)という組織について少し考察してみようと思います。

まず、全国福利共済会とは大企業に勤めていない人でも大企業並みの福利厚生を受けてほしいという概念から生まれたらしいです。
セミナーで勧誘することが多いみたいで、大体成功者っぽい人が講師として出てきます。セミナー参加は会員から誘われることが殆どです。創立者が天皇から表彰されたとか、いま自分は年収がこれくらいにまで上がっている、専業主婦だったが、夫に頼る必要も無いくらいの年収を得ているなどの話から始まります。ちなみに天皇からの表彰っていうのは、 本件の場合、公益のために私財を寄附した者に対するものなので、これはまあ儲けた分を良いことに寄付したっていうそれだけのことで、この全国福利共済とは正直関係ない事実っちゃ事実だと思います。

まあとにかく、大企業内の福利厚生を受けられるよ!会員が増えたらもっといい福利厚生を受けられるよ!っていうのがウリ文句です。ふーん、福利厚生ねぇ。。という感じの雰囲気をセミナー講師はおそらく参加者から感じるのでしょう。その後にP会員とK会員という概念の説明に入ります。P会員になると福利厚生を受けられるだけでなく、誰かをP会員にすることができたら、その分恩恵(金額)が得られると。K会員になると福利厚生を受けられるだけですと。
ここで面白い話をしてきます。P会員とはいわば全国福利共済の創業メンバーであると。みなさん、携帯電話が広まる前に、携帯電話のインフラに投資したいと思いますよね?それと一緒です!今後絶対に広まる全国福利厚生の創業メンバーになりたくありませんか?と。県民共済ってご存知ですよね?このくらい大きな組織になると思いませんか?と。

尚、現状の会員の構成は殆どがP会員だそうです。P会員は月4000円、K会員は月2000円。今後はK会員がどんどん増えて、今のうちにP会員になっておけば相当程度の収入が得られるようになると。
うーん、現状だけをみると、会員は福利厚生を受けたいというより、創業メンバーになりたいということが大きいとも言えなくはないですね。
月あたりの会員の定着率は月95%だと豪語しますが、逆にいうと月に5%は離脱しており、離脱した人が戻ってくる可能性は殆どないのではないでしょうか。月5%が抜けるというのは実は結構な離脱率であるとすこし算数をすると自明かと思います。(そしてその人達は基本的には二度と戻ってこないでしょう)

なるほど。。まあK会員がかなり増加すればP会員であると儲かると。この素晴らしいものを広めればいいんですと。

普通の感覚だと、素晴らしいものって普通に宣伝すればいいんじゃないですかね。これがいつもマルチ商法に対して思うことです。素晴らしい商品なら普通に宣伝すればいいんじゃない?県民共済は当然マルチっぽく拡大したものではないですよね?口コミって勝手に広がっていくものですよね?難しい概念だからしっかりと説明する必要があるからこのような形態が必要?新しい概念とは基本的になんで難しい概念と考えられるものです。電子商取引、電子書籍、スマートフォン、なんでもそうです。
というか、大企業並みの福利厚生を受けたいって別に難しい考えではないですよね。

まあ、借金してまで大量の在庫を抱えるということはないですので、気軽にできるというところがこの全国福利厚生共済のうまいところですね。

セミナーの最後には申込書を書くように言われます。曰く、とても複雑なので結局帰って一人でやると分からないことが殆どです。消印有効順で収入が変わることもあるので気をつけて!。。。。。煽ってきますね。。

月2000-4000円払って大企業の並の福利厚生ねぇ。。ホテルがちょっと安くなったりウォーターサーバー設置無料、ミネラルウォーターが安く買えると。。。

リンクが詳細です。世の中単純なことを複雑にしたほうが都合のいい人達がいるということにご留意下さい。
http://growth-and-smile.me/prime/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E7%A6%8F%E5%88%A9%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%85%B1%E6%B8%88%E4%BC%9A.pdf

いずれにせよ、上場してないので空売りは当然できないですね。

ちなみに、冒頭のBill AckmanはHerbalifeの空売り案件で相当現状かなり損をしております。当局などにマルチ商法を規制するように訴え、当局側も対応はしたものの、営業停止にはなっておらず、また米国以外の国で殆ど動きがなく、Herbalifeの業績はそこそこ順調に推移しているためです。
間違っていることを指摘すること自体は素晴らしいですし、大義もあると思いますが、かなりのポジションをそこに張ってしまったこと、また多国籍で運営していることなどの複雑性により、彼のファンドは現状かなり苦しんでいるようです。

NetflixにBetting on Zeroというドキュメンタリーがあり、この空売り案件について描かれているのでご興味あれば是非。

金投資を検討すべきか

金は一般的には安全資産として見られており、有事の際には資金を移動するべき対象とよく言われております。
個人的には、まだその論理に納得がしきっておらず、仮に”有事”とされる状況になっても資金を移すかどうかは正直決めきれておりません。

納得がいっていない理由は大雑把に言ってしまうと、適正な価格というものが計算できないからです。
企業価値なら、以前記載したとおり、理論上の価格を計算することは出来なくはないので、その価格を基準に割安だと判断できれば投資するということができます。
しかし、金の場合はいくらが適正価格か、計算が難しいです。基本的には需給で決まるものであり、金そのものは企業と異なり現金を生み出すことをしませんので、キャッシュフローの観点からの試算ができないからです。

安全資産と言われている金であっても、果たしてそれがその時点でどう割安なのか、割高なのかは、今後どの程度資金が金に向かってくるかを予想しないといけないわけです。
確かに破綻しようがないので、株や債券と異なり価値が0になることは基本的にはありません。しかし、用途の半分以上が宝飾用であるという金をどう評価すればいいのかは、基本的には世界の資金の流れを予想することが重要となってくるため、個人的にはかなり保有することは厳しいと感じております。当然ながら、金から資金が別のものに向かえば金の価格は非常に下がります。資源エネルギーとは異なり、過剰供給という点をそこまで考えなくてもいい一方で、金の使途はかなり限られているので、

金への投資を勧めている有名投資家もここ数年かなり多いと感じます。今後の見通しが悲観的であったり、いい投資先が見つからなかったりするということが多く、一先ず幾分かは金へ投資しているという感じです。
多くの投資家はヘッジファンドマネージャーですので、短期的にもリターンを下げることを嫌がります。ですので、一般的に株価と正の相関が低いとされている金へ投資することで、ポートフォリオ・マネジメント上、ヘッジをしている意味合いが強いと思います。毎月mark to marketする必要のない投資家はこのようなことを果たして本当にする必要があるのかは正直まだ個人的には分かっておりません。

バリュー投資がベストだと思うように至るまで

色々とバリュー投資についての話はしてきておりますが、投資家の皆さんはそれぞれの個人的体験、経験が今の投資スタイルの礎になっているかと思います。
私の場合は証券会社の投資銀行部門で働いている中で企業価値評価が興味深いと感じまして、様々な企業の財務分析を職務以外でも行っておりました。その中で色々な業種・会社の企業価値を比較したりするのですが、明らかに割高になっているものや割安になっているものがあるのでその理由でしたり、その後のパフォーマンス(株価と財務状況)を個人の興味として分析したりしておりました。
徐々に自分の中で分かってきたものとして、株式投資はその瞬間のニュースなどによる感情的なものや、企業のイメージ、業界のイメージなどのそこまでしっかりとした根拠のない状態で投資判断がされていることが多いということでした。また証券会社のアナリストレポート等を読んでも、業界の行方や四半期利益の状態に関しては細かく分析がされている一方で、企業価値評価(バリュエーション)に関しては大分曖昧なことしか書かれていないことが多く、中々驚きました。以前書いた内容ですが、まさにPLでしか評価がされていなかったりする企業が余りにも多かったためです。
一方で、M&Aに関しては基本的には売り手にも買い手にもアドバイザーが付き、キャッシュフロー分析を始めとした財務分析が詳細にされますので適正と思われる評価に落ち着くということが多いです。
かつ、M&Aのプロセスとして限定的なオークション方式をとることが当然多く、また買い手としては資金を使いたい事業会社やファンドが多いので、どうしても譲渡価格は安値というよりは高値になることが多いかと思います。
M&Aの基本として、シナジーの実現や事業・カルチャーのフィットなども重要であるが、一番重要なのは買収価格であるとよく言われます。どんなに良い事業でもそりゃ余りにも高い水準で取得するとリターンを得ることは難しいということです。
前述したとおり、M&Aの特性上どうしても取得できるのはほぼ一社に限られますので、オークション等を通じて価格は必然的に高値になります。そういうことを見たり、考えているうちに割安な企業への投資への興味が大きくなっていきました。
プライベート・エクイティファンドに転職後はバイアウト投資に何件か関わりましたが、前述した通り、どうしても割安な価格で案件を行うということは無理でした。(特に大きな買収案件なほど無理度が上がります)
当然、プライベート・エクイティ・ファンドによるバイアウト投資はLBOという形式をとりますし、いわゆるバリューアップ活動も積極的に実施するのでちゃんとリターンは上がるわけですが、割安企業への投資という興味は日に日に増していきました。安定したキャッシュフローを生む、もしくは既に純流動資産を豊富に保有する企業が普通ではあり得ない価格で放置されているのがどうしても気になって仕方がない状態でした。
そういった中で、バリュー投資についての著作などを多く読んだり、実際に銘柄選定等をするなど勉強を進めていき、バリュー投資こそが最も自分にはあっているし、多くの人に理解されるべきものだと思うように至ったというわけです。正直に言って、バリュー投資は派手でもなく、みんなが知っているような企業に投資するわけでもなく、すぐに高騰することも余り期待できませんので、非常に地味な存在であることは分かります。
しかし、各銘柄において素晴らしい将来の予想を行ったり、市場の誰も気づいていない事実を正確に理解することも必要なく、日々のニュースや株価を細かくチェックすることもなく、企業が公表している財務諸表を分析することのみで判断をすることができるという点が素晴らしいと思っております。
余りに地味であること、一定の財務分析能力が必要になるということが一般的に投資手法として受け入れられることのハードルになっているかと思いますので、本サイトを通じて、少しでもバリュー投資というものを認識してもらえるようになればいいなと考えております。